ハルムスの話:私にとってハルムスってなんだっけ

ハルムスについて
                                   客野支配人

 疲れました。
 ハルムスの話です。
 
 私は春日部ハル×天堂寺ムスビ、つまりハルムスが好きです。
 しかし、これまではほとんど、読んで「はー無理尊い」と言うばかりで、自分から特に何かを発信するということはしませんでした。
 ですがつい最近、ハルムスの神として、平素より私が尊敬するお方のハルムス漫画を読ませていただき、その素晴らしさに衝撃を受けました。
 こんなにすごいものがあるなんて…!
 そして思いました。自分も書いてみたい。
 残念ながら絵は描けません。考察はしたくありません。音楽も作れません。となると、あとは小説しかないではないか!これ以上なく安直な理由で、私はハルムス小説を書こうとしたのでした。元々小説が好きというのはあったのですが、実際に書いたことはほとんどなく、未知への挑戦でした。
 
 しかし、いくつか書いて、私はびっくりしました。つまらない。嫌悪感さえ覚えるものがほとんどだったのです。
 アップして残しているものは一応許容できると判断したものなのですが、これではハルムスについて何も伝えられない…

 なぜつまらないのかというと、単純に私の技術の無さでした。「こういうシチュエーションいいよなあ…」の「いいよなあ…」を文章に落とし込めない。ぎこちないものになってしまう。表現は角ばり、会話は上滑り、展開は唐突。伝えたいことを伝えられない、自分の技術の無さを呪いました。

 しかし、ふと思いました。
 技術も大事だけど、それ以前に、自分はハルムスの良さというのをちゃんと認識できていないのではないか…?なんとなくぼんやりとしかわかっておらず、言語化できてないから、それを文字化することもできていないのではないか…?
 そのような仮定をして、自分に尋ねました。ハルムスのよさとは?

 …尊い

 だめだこりゃ。小説も失敗するはずだと思いました。技術云々の問題以前に、何を伝えたいのか自分でよくわかっていない。

 だから、小説を書く前にまず、自分が何を伝えたいのか整理してみることにしました。それが今回の主題です。ハルムスってなに?ハルの良さって?ムスビの良さって?
 人によってはこれを考察と呼ぶのかもしれませんが、私にとってはこれは単なる事実整理です。単なる事実整理ですが、整理するのは私なので、どうしてもそこに主観は入ってきます。それがたぶん伝えたいことなのです。
 どなたかが、「あ、それいいよね!そこ自分も推したいとこ!」と言ってくだされば嬉しいなあと思いながら、今回は書いてみることにします。

1、 私にとってのムスビ
さて、まずはハルとムスビ、それぞれについて考えたいと思います。
まずムスビですが、私にとっての彼女の魅力とは、「悩み続けるところ」です。
エピソード「ワン・ステップ・フォワード」を読めばわかると思いますが、ムスビは、自分にとってアイドルとはなんなのかを一生懸命考えています。
印象的なのは、劇中にも出てきた、焼きそばパンをめぐる場面。
大好きなはずの焼きそばパン。その大会なら、絶対に優勝したいと思うはず。それなのに、負けても悔しいと思えない。自分にとって焼きそばパンってなに…?
焼きそばパンに限った話ではありません。例えば、厳しい口調や態度。例えば、コンプレックスだった歌声。
「完璧超人」ではない「本当の自分」を構成していたはずの1つ1つの要素が、実は自分にとって、そんなに大したものではなかった。
答えだと思ったものは、実は新たな問いでしかなかったのです。それを彼女は、「自分だけスタートラインに取り残されたみたい」と表現します。自分は何物も見つけることができていないのだと。

しかし、エピソード「遠回りして、見つけたもの、大切なもの」においてムスビは、それを逆手にとって、「「本当の自分」とは、迷いながら答えを探すことだ」と考えます。つまり、「「問い」を作り続けること」こそが彼女にとっては「答え」なのです。
でも、16歳というまだまだ若い彼女は、その「答え」がどれほど難しく、厳しいものであるかを理解していなかったのです。
「「問い」を作り続けること」はエピソードでは「探究」という言葉になっていますが、その最終到達点として彼女が選んだのは、「パフォーマンスを完璧なものにする」というものでした。しかし、これはミスでした。確かに、「パフォーマンスが完璧である」というのは、1つの目標となりうるものです。しかし、「「問い」を作り続ける」という視点に立つならば、「パフォーマンスが完璧である」ということは、ゴールの1つの候補でしかありません。「パフォーマンスは完璧とは程遠いが、なぜか人を惹きつける」。これもまた1つの到達点としてあるはずなのです。
真に「探究」ということを目標にするならば、ゴールは「観客を感動させる」というエンターテイナーの条件のもとに、複数あるということを理解していなければならないのです。
しかし、ムスビはそれに気が付きませんでした。ひたすらトレーニングを重ねて、完璧なパフォーマンスができたら、それでゴールにたどり着けるのだと思い込んでしまいました。だから、それが誤りであると観客から突きつけられると、全く対応できなくなってしまったのです。
「探究」という言葉はそんなに甘いものではないのです。少なくとも、1つの「答え」に固執している人間では、達成はおろか、それを理解することさえできない。
「「探究」を達成するためにはこれ(例えばパフォーマンスを完璧にすること)をしたらいい」というのは転倒した発想です。「「探究」を達成するためには、ひたすら悩むべきだとは思うが、よくわからない」というほかありません。

エピソードでは、それが丁寧に語られます。アイドル部部長は「完璧なパフォーマンスを見たいわけではない、天堂寺ムスビを見たい」と言いますが、それはまさに「迷っている姿こそが「答え」である」と言いかえられます。また、「完璧なパフォーマンス」をしていたはずなのに、懸命に自分を応援してくれていたアイドル部部長が見えていなかったというのは、実はムスビのパフォーマンスは「完璧なパフォーマンス」ではなかったということであり、もし、本当の意味で「完璧なパフォーマンス」をしていたら、結果はどうなっていたか分からない、もしかしたら観客はウケたかもしれない、ということを示しています。安易に「悩むことこそが「答え」だ」と言わないこの部分は、エピソードの中でも味わい深い部分だと思います。

さて、エピソード「遠回り~」で、ムスビはこのようなことを完全に理解したのでしょうか?私はそうは思いません。きっとこれからも色んな「答え」に飛びついて、傷つくのだろうと思います。しかし、その姿こそが「答え」である可能性が今のところは1番高いわけです。
曖昧なところを、実践をもって進もうとする。その姿が私は好きなのです。

2、 ハルについて
春日部ハルは、私にとって不思議な存在です。
ぶっちゃけ、「推し」ではありません。私の推しはムスビ、レナ、マツリさんであり、その次、「推し」に近いところにハルが来ます。
したがって、ハル「だけ」を見た時にはどうしてもムスビより語る部分が少なくなり、また、ハルムスとの関連で語る部分も多くなります。そのような態度がよいものではないのは百も承知ですが、こればかりはどうしようもないのでご容赦願います。

私がハルを鮮烈に意識したのは、エピソード「ノッキン・オン・セブンス・ドア」です。その3話、「逃げ出した記憶」――といったらもうわかるとは思うのですが、グラビアについて語るところです。
自らの実力不足で歌やダンスの仕事が減る一方で、グラビアの仕事が増える。
グラビアを「恥ずかしい」という理由で忌避するアイドルはたくさん見てきましたが、そこまであけすけには言ってないにしても、明確に、性的な視線を意識して嫌悪感を示す二次元アイドルはほとんど記憶にありません。
身もふたもない話をすれば、多くの二次元美少女コンテンツは性的欲望と密接に関連しており、どうしても脱いだりエロいことをさせなければならないのですが、そこでキャラに明確な拒否反応を許してしまうと、その後のコンテンツ展開がやりにくいということなのでしょう。あくまで、「ちょっと恥ずかしいけど、仕事には前向き」でなければならないのです。
語弊を恐れずに言えば、ナナスタのアイドルも、大半がそうだと思います。
私は、そこは妥協するしかないところだと思いますし、あくまでそれはそれとして楽しめばいいなと思っています。私も、水着や、水着みたいな衣装を着た美少女大好きですし。
でも、だからこそハルの発言には驚いたのです。それがナナシスのエピソードの第一話ということもあって、ナナシスにハマるきっかけにもなりました。こう言わせたということは、この子には水着を着せないということか。そのチャレンジングな姿勢に、私は感銘を覚えたのです。

しかし、その後のナナシスの展開は、私の予想を完璧に裏切りました。
ハルのカード、水着がめちゃくちゃ多いのです。

Gだけでなく、Pカードでも水着があります。しかもけっこう大胆な。
かなり驚きました。え、なんでそんなことになってるの???

エピソードを読み返してみると、確かに、ハルが「グラビアの仕事が多くて云々」の話をしているのは、彼女の回想のなかです。支配人やコニーさんがその事情を知らず、水着の仕事をとってきて、ハルが悲しみを隠して仕事に臨むという話は成り立たなくはありません。プロ根性で作り上げた笑顔の下から時々ふっと見える絶望の影がなんとも妖艶で大人気、と言えるのかもしれません。
でも、それはちょっとどうなんだろう?と思います。それは確かにある種の魅力なのかもしれませんが、そんなにはっきり言ってしまえば「下衆な」話を、全年齢対象のアイドルゲームの主人公にやらせるのが、茂木さんの描きたかった物語なのでしょうか?

そうだとはどうしても思えない、いや、思いたくない私は、別の可能性を探りました。
つまり、「ハルがグラビアを嫌いになったのは、「性的視線」ではなく、別の理由ではないか。だから、それを乗り越えた今はグラビアに積極的に取り組めるのではないか」という可能性です。
その可能性を妄想したのが「ハルムスの二次創作です(やや原作をはみ出しているかも)・推敲」(http://kyakunon20.hatenadiary.jp/entry/2017/10/30/111124)でした。
以下に、簡単に内容を要約します。
当時色々なことがあって落ち込んでいたが、「グラビア」は「守ってくれるものがなく、自分がむきだしになった状態」になってしまうため、「落ち込んでる自分」を晒すことになってしまう。それは娯楽を求める客をがっかりさせることだし、自分も弱いところをいじられるようで嫌だ。だけど、自分に自信がある今なら、みんなを楽しませることができるから、そう悪いことではない。
自分で書いていて、かなり微妙だなと思います。そもそも、「グラビア自体はそれほど嫌じゃない」という前提に立たざるを得ないので、かなり夢見がちな話になってしまうのは避けられません。公式にうまい説明が出てくるのを望みます。

なんでここまでずっとグラビアの話をしたかというと、ハルが、こういうかなり辛い過去を過ごしてきたということが、現在に活かされていると思うからです。
エピソードの要所で、ハルは決断を下します。それは一見すると大胆だったり無謀だったりもするわけですが、それを思いつくのは、彼女に天性のアイドルの素質があるから(だけ)ではなく、どん底を知っているからこそではないかと思うのです。どん底というのを示す1つの例がグラビアというタブーに触れたことだと思うのです。
普段はぽわっとしていて、天然のような彼女が、実は色々と考えている。そう思ってエピソードを読むと、見方が違ってくる。それが深みかなと思います。

3、 ハルムスについて
さて、いよいよハルムスについて整理したいと思います。
繰り返しになりますが、私の、ハルとムスビの好きなところは、ハルが「辛い経験を現在に活かしている」こと、ムスビが「迷い続けていること」です。
この2人が出会うと、どういう反応が、魅力が生まれるのでしょうか。
大筋を言ってしまえば、それは「対立と葛藤」です。

ハルとムスビは、仲がいいです。ナナスタに入ったのは、ハルが1番目で、2番目がムスビ。3rdライブのハルカゼの前の、高田憂希さんの口上でも触れられ、キラチュナで1(ONE)がハル、12が(TWELVE)がムスビであることからわかるように、そして篠田みなみさんがハルとムスビを「夫婦」と称したように、隣で長く同じ時を過ごした2人は、その存在が当たり前すぎて重要性を普段は忘れてしまう「空気」みたいなものです。
お互いについて言及することはあまりありませんが、そのことがむしろ以心伝心を表しているみたいで最高。…たまにはわかりやすくイチャついてほしいなあも思いますけどね!
そんな2人だからこそ、対立すると目立ちます。エピソード4U「12・アングリー・アイドル」で、4Uと対決するリスクを心配し、対決するならその意味をちゃんと考えようと言うムスビに対して、ハルは意味なんて関係ないと言います。それはムスビに対して、はっきりと「違う」と言った瞬間でした。
なぜ2人の意見は違ったのでしょう?
ムスビが、対決する理由を、自分と4U以外に求めようとしたのに対し、ハルはあくまで自分と4Uのことを考えますが、その差を生んだのは、アイドルへの想いでした。
ムスビと違い、ハルにとって、アイドルを否定することは絶対的に間違いだったのです。それはハル自身の、アイドルへの強い想いです。
このエピソードでは、ムスビ以外の777のメンバーは基本的にハルと同意見ですが、冷静な判断をぶち壊してでも自分の意見を通そうとしたのはハルだけでした。彼女のアイドルへの想いは、人一倍強い。
それが、さんざん辛い目に合ってもそれでもなおもう1度アイドルになりたいと叫んだ、彼女の過去にあるのは明白です。
しかし、ムスビはハルの過去を(少なくともエピソード4Uの時点では)知らないと思います。いや、知っていても基本的には同じだと思いますが、ムスビは、なぜハルがそこまでアイドルにこだわるのか分からないのです。
つまり、天性ともいえる、アイドルへの強い強い志向がハルにはあるのです。ところが、ムスビにはそれがない。自分にとってアイドルはなんなのかがわからない。
一生懸命考えはするけれど、考えれば考えるほど、理詰めで考えようとすればするほど、フィーリング的な「言葉では言えないけど、なぜかとにかくアイドルが好き」というハルの考えとは離れていくのです。
ムスビは、アイドルに対して真摯でありたいと願っています。それは間違いではないでしょう。でも、それは、最初からアイドルという存在に憧れていたハルとは異なり、あくまで「本当の自分」を探す手段だったのです。
この意味において、ムスビはハルに対してアイドルとしての「引け目」を負わずにはいられないのです。
しかし、「引け目」は同時に、ハルが、自分がもつことができないものを持っているということを「尊敬する」心理とも言えます。
相手を疎ましく思う「引け目」と、近づきたいと思う「尊敬」という、相反する感情がムスビの中には渦巻いているのではないでしょうか。

では、ハルはどうでしょう。ハルはムスビのことを普通に好きとだけ思っているのでしょうか。そうではないような気がします。
ただ、今の私にはうまく思いつきません。今考えられる限界を書いてみますが、正直、いまいち説得力に欠けると思います。その理由も後述しますが、とりあえず正確な理解は今後の課題ということにして、書けることを書いてみます。

ムスビは、エピソードを読めば分かりますが、悩む時は基本的に全部曝け出して悩みます。問題にぶつかって、倒れたらまた起き上がる。その姿に私は魅了されるのだというのはすでに述べました。その「問題」の中には、彼女の悩みである「幼いころから周囲の期待に苦しんでいた」ということも含まれています。ムスビは過去と向き合い、答えを出そうとしているのです。
その一方で、ハルは、エピソード4Uについての記述でも書いたように、過去をあまり積極的には仲間に開示していないようです。彼女の中では、人に話すことができるほど、十分には苦しい過去を乗り越えることができていない。ムスビもそれは同じなのに、むしろ自分から自分の過去を暴露していく。その勇気は、ハルは持っていない。長く隣にいるムスビにさえ自分の過去を話せないことを、ハルは恥じている。
グラビアの話で言ったことを踏まえると、ハルは、仕事においては、辛い過去を活かせるほど強くなっています。ただ、それを人に話すことはできていない。
もちろん「仕事においては克服しているのに人には話せない」というだけでは、負い目とは言えません。他の誰かがその話を聞きたいと思っているのならまだしも、(ムスビのように)自分の問題解決のために自分の過去をわざわざ人に話す必要はないし、普通はそんなことを負い目と思いません。
ではなぜ負い目を感じるようになるかと言えば、ムスビの視線があるからです。既に言ったように、ムスビは、ハルの天性ともいえるアイドルへの強い思いを尊敬し、また、同時に疎んでいます。ハルの過去を知らないムスビの眼には、その思いは極めて純粋なものに映るでしょう。
しかし、実際はそんな純粋なものではありません。彼女は1度挫折し、その後でアイドルにまた戻ってきたからです。彼女の過去を知れば、純粋だと思い込んできたムスビの幻想は解ける。
ハルのアイドルへの思いは、「純粋」なものではないのに、彼女は「純粋」を装う。これが、ハルが過去をムスビに明らかにしないことによって、負い目を感じる理由です。

しかし、この考えには穴があります。既にムスビについて述べたように、ハルの過去を知ることは、ムスビが、ハルのアイドルへの思いに対して抱く気持ちを変えることにはなりません。ムスビが「引け目/尊敬」を感じるのは、「純粋」というところではなく、「天性」というところなのですから。むしろ、挫折したのにも関わらず諦めないという、「純粋」よりもさらに強い思いは、ムスビの、ハルへの思いを強くするものでしょう。
だったら、ハルはムスビに喋ってしまった方がいい。
これが、今のところ私が限界を感じていると思う理由です。

ただ、限界を破る道が、全く見えないわけではありません。
それは、ハルにとって、ムスビが幻想を抱いたままでいた方がいいという可能性です。
あまり細かくやってしまうと考察になってしまうので、簡単に述べるにとどめますが、要するに、「ハルが、ムスビは自分のことを「純粋」な存在として見ていてほしい、と思っている」という可能性です。
ハルのアイドル観にも深くかかわってくる話ですし、たぶん、これに答えを出すのが、私にとってのハルムスの到達点の1つだとは思うのですが、あまり公式にそういうことをにおわせる場面は無かったので、ここでは判断は保留しておきます。

ちなみに、このハルのムスビへの思いに決着をつけられないから、私が描くハルムスは基本的に、決着をひとまずつけたムスビの視点で書いています。いつかハルの視点でも書いてみたいですね。

4、 終わりに
最後に課題が見えたところで、今回の現状把握は概ね終わったということにしたいと思います。本当はスームスとかハルウメエモムスとか色々考えないといけないことはあると思うのですが、とりあえず、今の自分の手の届く範囲のものは、少し見やすくなったかなあと思います。
もう少し短くするつもりが、特にムスビについてうまく言葉をまとめられずふわっとした感じになってしまったのは反省点です。
ハルについても今後は勉強したいと思います。