俺ガイルの新刊がやっと出てうれしい

誰が彼らの関係を決めるのか(俺ガイル13巻を読みました)(ネタバレあるよ)

 1枚ページをめくって目次を開くと,その隣には懐かしい青い線と勢ぞろいしたキャラクターたち。1巻を読んだ時の記憶がよみがえり,ああ,本当に終わるんだなあと,とりあえず最初の感想はそういうものでした。
 12巻の時も相当待たされましたが,今回の13巻も待ちましたね…本当なら13巻は先月出ていて,今月は14巻の予定だったということを考えると,また次もだいぶ待たされそうな気がします。ただ,別に嫌ではないですね。というよりむしろ,終わってほしくないので,5年くらい寝かせてもらった方がいいかもしれません。

 冗談はさておき,劇的な引きを見せた12巻に引き続き,13巻もまた,読者をやきもきさせる終わり方をして,14巻に続く,という感じです。舞台は例によってプラムを巡るあれこれ。とはいえ,「正直,プロム自体は割りとどうでもいい」(p.164)あたりまで読むと,「またいつものあれか」というお決まりの展開です。雪乃と「対立」という形をとって懸命に計画をするのですが,最終的には,いろいろみんなに手伝ってもらった計画はあっさりと雪ノ下母に見抜かれてしまい,八幡が,彼自身の機転で乗り切るという結末を迎えます。雪乃はそうなることを予想していました。それは「信頼」であり同時に「依存」でもあると,彼女は語ります。
 八幡は,「そうだとしても,勝ちは勝ちだ」とフォロー(まあ,彼にとってそれはフォローというより自分のための言葉なのでしょうが)をします。この辺りのくだりはこれまで何度も何度も繰り返されてきたので,私としても気が重くなります。結局のところ,八幡がどれだけ「雪乃はちゃんと自分で頑張っている,依存じゃない」と言ったとしても,結果として,雪乃の困難を八幡が解決すること,そして雪乃がそれに苦しむという構図は何一つ変わりません。これだったら,ちゃんと真っ向から対立した方がよかったでしょう。まあ,それができなかったというのがミソではあるわけですが。
 雪乃は結局,自分たちの関係はやはり「まがいもの」だったのだと,自ら語るに至ります。だから終わらせたいといい,八幡もそれを受け入れる……

 そこで13巻は終わるのですが,このドロドロとした負の連鎖の原因は,やっぱり「相手のことを思う」ということにあるような気がしていて(それは,いろはや結衣が理解できないと語るレベルより更に深いところにありそうです),それに八幡も雪乃も気づいていないあたりがなんとももどかしいですね。「ダブルバインド」「誤前提提示」というのが今回ちょこちょこ出てきますが,これもそれに近い話である感じがします。「相手のことを思って行動する」とそれは「依存」であり,「依存」であることをやめるとそれは関係の終わりになってしまう。彼らには何か大きな前提があって,それが見えていないか,もしくは見えたとしてもその前提を取り外せないかで,結果として翻弄されている。八幡自身もある程度それはわかっているようではあるのですが,それを壊すつもりはないようです。
雪乃を助ける方法が「対立」しかないというのは,まあいいでしょう。なるほど確かに,ダブルバインドを越えるために,いっけん助けにはならなさそうなやり方で,直接的にではなく,間接的なやり方で雪乃自身の解決をサポートする。結果として失敗したわけですが,筋は悪くない。
 でも,その行動の動機が「男の意地」とか「責任」という,八幡自身にとってはあまり積極的とはいえないものであるため,結局,「助け」終わったと雪乃に言われしまえば,共依存を避けるためにも,そのあとに関係を持続させる理由はなくなってしまう。こんなに想い合っているのにも関わらず。八幡の「本当の」動機がどこにあるのかというのは,結局明らかになりませんでした。次まで引っ張るのでしょうね…胃が痛いです。
 彼らが,全く言葉というものを重んじなければ,あるいは結衣のように,あえてそれに重きを置かないようにすれば,こんなに面倒なことにはならなかったでしょう。陽乃さんに,自分の心の痛さを根拠にして,共依存ではないと主張できたでしょう。
 あるいは彼女たちがもっともっと聡ければ,自分がどういう状況にいるかをもっと客観的に捉えられれば,(正しい意味で)もっと論理的に問題点を把握して,関係を築けたでしょう。
 でも,彼らはちょうどその中間にいる。一生懸命考えていて,論理的には筋が通っているようでいて,実はまだまだ勉強不足だから,よけいな知恵のせいで苦しむ。でも,直観に全てをゆだねることへのためらいは大きい。高二病っぽくていいですね。私にもそんな時代がありました。というか,今なおその中にいます。だからこそ,「本物が欲しい」という「言葉」が「響いて」くるのかもしれないです。
 さて,こんな八幡たちではありますが,全くの進歩が無いわけでもありません。陽乃さんとの話し合いの場面の,「それを言う相手はあなたじゃない」(p.325)あたりはしびれました。葉山には「男の意地」なんて茶化したところをみると,「共依存」というラベルを張り付けてきた陽乃さんへの牽制というか反発でしょう。
陽乃さんは以前からラスボス感満載だったわけですが,今回「本」が出てきたことで,それがいっそう高まりましたね。葉山は,雪乃への陽乃の態度に特別な意味を見ているし,そういう部分が無いわけではないのでしょうが,そこに収まりきらないんだろうなあという気もします。彼女は本物が「欲しい」というより「見たい」らしいのですが,その観察対象にされた人にとってはいい迷惑ですね。頭が切れるから,下されるディレクションがいちいちもっともらしいのが余計に腹立たしい。部外者に勝手に意味づけをされて,そのうえ勝手に評価までされることへの嫌悪感。八幡の怒り(というほど強い感情かはわかりませんが)は理解できます。
海老名さんに対するモノローグもそれに近いものがありますね。自分たちのやっていることを「ペシミズム」とみなされることを,八幡は断固として否定する。海老名さんは,八幡たちがやっていることは露悪的なものにしか見えない(し,そのことを理解していないとすれば愚かしいと考える)のですが,八幡にとってそれは,愚直で真摯な積み重ねでしかないわけです。この辺は,「本物が欲しい」あたりで終わったことかなと思っていたので,ここで繰り返されたのはちょっと驚きでした。
 でも,ここでこの「すれ違い」がもう1度示されることで,八幡の「本物」をめざす探究が,いっそうクリアに見えてきたような気がします。同じ穴の狢(海老名さん)も,頼りになる導き手(葉山)も,裁定者気取りの観察者(陽乃さん)も,彼らの関係の中には入ることができないということが,改めて分かります。たくさんの魅力あるキャラクターに囲まれながらも,俺ガイルは,やはり断固として,比企谷八幡雪ノ下雪乃由比ヶ浜結衣の物語なのだなあと思いました。最終巻はこの3人だけ登場させて,14.5巻でアフターストーリーやるとかじゃダメですかね…(懇願)
 最終巻はどういう展開になるのか,アフターストーリー的なものをやるのか,そしてアニメは3期をやるのか(ストック的には激情版とかの方がいいんでしょうか),色々と期待は尽きませんが,とりあえず13巻はこんなところで終わりたいと思います。

玉縄よくがんばった!!!